北ア遠見尾根の死亡事故から20年

雪崩の体験語り継ぐ

亡くなった教諭の友人ら高校生らと現地慰霊

信濃毎日新聞 掲載

平成21年03月16日(月)


 北安曇郡白馬村の北アルプス遠見尾根で一九八九年三月、県山岳総合センター(大町市)主催の研修会中に雪崩が起き、松本蟻ケ崎高校(松本市)教諭酒井耕さん=当時(24)=が死亡した事故から丸二十年になるのを前に、遺族らが十五日、現地を慰霊に訪れた。当時救助された元教諭らが「事故の教訓を語り継ぎたい」と、雪崩の様子を地元高校の山岳部員らに話した。

 雪崩は三月十八日、県内高校の登山部員や顧問が参加した「冬の野外生活研修会」中に発生。輪かんじきの歩行訓練をしていた五人が巻き込まれ、四人は救助されたが、酒井さんが亡くなった。

 慰霊は、酒井さんと高校時代からの親友だった大町北高(大町市)山岳部顧問の西牧岳哉さん(44)が呼び掛けた。同校山岳部二年生三人のほか、研修会に参加していた当時の生徒ら十二人が参加。白馬五竜スキー場最上部から十分ほど歩いた先にある現場近くの斜面に花を手向け、酒井さんの冥福を祈った。

 当時、松本蟻ケ崎高の山岳部顧問で雪崩に巻き込まれた赤羽康定さん(62)=松本市中山=は「ドドドッと雪が押し寄せて来て、すぐに気を失った。体なんて動かせるものじゃない」と振り返った。木の生え方や雪の断面から雪崩の危険性を判断する方法を説明。生徒らに「雪崩に遭わないようつ基本的な知識を身に付けなさい」と力を込めた。

 将来、山岳救助にかかわる仕事がしたいという大町北高の百瀬凛太郎君(17)は「現場に来て、雪崩の怖さが分かった。事故を防ぐためにどうしたらいいか、もっと知りたい」と話した。

 白馬山麓では、昨年二月に同郡小谷村の栂池高原スキー場でスキー実習中の大学生二人が死亡するなど、雪崩事故が後を絶たない。酒井さんの母三重さん(73)=松本市征矢野=は「雪崩で子どもを失う親が二度と出てほしくない。事故を風化させないためにも、体力が続く限り慰霊に訪れたい」と話していた。

写真:現場近くの斜面で雪崩事故の様子を説明する赤羽さん(右)


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研修登山注意怠る
 国の過失初めて認定


 研修登山 冬山での遭難が後を絶たないことから、国や自治体が大学山岳部の学生や社会人などを対象に、登山技術の向上やリーダーとしての資質養成を目的に行う。旧文部省は昭和42年、富山県立山町に登山研修所を設置し、現在も定期的に研修会を開催。神奈川県なども施設を設け、研修登山を実施している。平成元年3月、長野県が北アルプス・遠見尾根で行った研修登山で、研修生が雪崩に巻き込まれて死亡した事故では、長野地裁松本支部が講師らの過失を認め、県に賠償を命じている。

大日岳遭難事故当時の
文部省登山研修所所長=現・大町山岳博物館館長/現・長野県山岳協会会長 柳沢昭夫氏

長野県山岳総合センター研修登山遭難事故当時の
研修会現地リーダー=現・長野県山岳協会副会長 宮本義彦氏