大町山岳博物館創立55年で「あゆみ」展

カモシカ飼育など紹介

信濃毎日新聞 掲載

平成18年11月9日(木)


 大町市立大町山岳博物館(神栄町)は、創立五十五周年記念の「博物館のあゆみ」展を十日まで同館講堂で開いている。
一九五六(昭和三十一)年に最初の一頭を保護してから続くニホンカモシカの飼育や、二〇〇四年に最後の一羽が死亡するまで約四十年間行ったライチョウの低地飼育(人工飼育)などの取り組みをパネル展示を中心に紹介している。

 「山博(さんばく)」の愛称で親しまれている同館は、五一年十一月一日に開館した日本初の山岳博物館。戦後間もなく、地域の青年たちが「地方文化向上のために郷土の特殊性を生かし、北アルプスの大自然をもう一度見直そう」と打ち立てた構想が実現した。

 カモシカ飼育のパネルでは、旧安曇村(現松本市安曇)で生後九カ月ほどで保護され、二十一年間飼育した最初の「岳子」を紹介。日中国交回復を記念して中国から七二年にパンダの「カンカン」「ランラン」が日本に贈られた返礼で、同館で飼育していたカモシカ「太郎」「辰子」が七三年、中国・北京動物園に贈られたことも展示した。

 ライチョウでは、六三年六月に北アルプス爺ケ岳で卵四個を採取、博物館でふ化させて始まった低地飼育や、北アでの調査などを説明した。

 同館の入館者数は、社員旅行や修学旅行などの団体客が多かった八五年度の九万三千九十六人をピークに、昨年度は一万七千六百六十六人に減少。同館は、収集資料の整理や公開が十分でないことも課題とし、今回の展示で、市が作っている第四次総合計画の中で博物館の使命を明確にし、事業を展開したいとしている。同展のみの見学は無料。

写真:大町山岳博物館が開いている「博物館のあゆみ」展。手前は初めて飼育したニホンカモシカ「岳子」のはく型

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