鹿島槍ヶ岳遭難

悪天候なぜ

女性の遺体収容

信濃毎日新聞 掲載

平成21年04月30日(木)


 北アルプス鹿島槍ヶ岳(二、八八九b)で男女二人が行方不明になっている遭難で、大町署と県警山岳遭難救助隊は二十九日、女性の遺体を鹿島槍ヶ岳東尾根から収容した。北アでは二十八日、鳴沢岳(二、六四一b)で凍死した男女三人の遺体が見つかっている。両パーティーとも登山経験豊かなべテランがいて、天候が大きく崩れた二十五日に入山した。判断は適切だったのか、山岳関係者から疑問の声も出ている。

 鹿島槍ヶ岳で遺体が収容されたのは、千葉県松戸市、会社員坂口よし江さん(54)。もう一人の東京都八王子市、会社員河本正孝さん(65)の捜索は、日没が近づいたためいったん打ち切った。三十日早朝から再開する方針。

 大町署によると、坂口さんは東尾根アラ沢ノ頭」南東側直下の氷壁にロープで約四十b笛づりになっていた。ロープの上端は低木に結んであったという。遺体に目立った外傷はなく、凍死とみられる。

 二人は二泊三日の日程で大町市の大谷原から入山、東尾根経由で鹿島槍ヶ岳に登り、二十七日に下山予定だった。県警ヘリコブタ一によるこれまでの捜索で、アラ沢ノ頭から直線で約一`離れた東尾根下方の「二ノ沢ノ頭」直下にある雪庇の割れ目で人影が見つかっている。

 二人は同流山岳会(横浜市)に所属。大町署に駆けつけた会代表の北島英明さん(50)は、坂口さんが亡くなったこ

とに「残念でしょうがない。いつも明るく、会の運営にも協力してくれた」と語り、河本さんについては「冬山の経験が豊富で国内の難しい山にも登っている」と述べた。

 北ア北部4人死亡

 大町市から北ア北部に二十五日に入山した二パーティー計五人が遭難し、二十九日までに四人の死亡が確認された。二十五日は低気圧が発達しながら東海沖を東進した影響で県内全域で雨。長野地方気象台によると、同市の平地でもまとまった雨が降った。

 鳴沢岳で死亡が確認された京都府立大(京都市)の三人が通過したとみられる黒部ダムも、二十五日の天候は雨で、午前七時の気温は一度。しかし、標高が高い地域では雪が降り、風も強まったとみられる。富山県警によると、三人とも装備は春山用で、死因は凍死だった。一方、鹿島槍ヶ岳で遭難した二人は、所属する同流山岳会の北島英明代表によると、悪天候ならルートを変更すると言っていた。、実際は計画通り進んだとみられ、北島代表は「天候の読み違えか、天候に対する甘さか、技術の問題があったと思う」と話す。

 県山岳遭難防止対策協会の丸山晴弘講師(68)は「春山は厳冬期のような寒さがないため、ベテランでも油断しやすい」。

 北アルプス北部地区遭対協救助隊の降旗義道隊長(61)は「あれだけの低気圧が来ていれば、計画を見直すのが普通なのだが…」と話した。