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岳沢ヒュッテ無念の廃業 | |||||||
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二〇〇六年の雪害で全壊した北アルプス・岳沢の山小屋「岳沢ヒュッテ」の経営者、上条明穂さん(44)=松本市=は二十七日、ヒュッテの再建を断念し、廃業することを明らかにした。再建費用の大きさや再び雪崩などで倒壊する懸念から営業再開は困難と判断した。岳沢は穂高連峰と上高地を結ぶ登山ルートにある遭難救助の拠点でもあり、山小屋関係者はヒュッテに代わる施設が必要だと指摘している。
標高約二千二百bの岳沢は背後に穂高連峰の急斜面が迫る。ヒュッテは一九五六(昭和三十一)年、明穂さんの祖父の親人さんと父の岳人さんが建設し、徐々に増築。全壊前の床面積は約六百平方b、収容人数は約二百人だった。周辺で遭難事故が起きた際は岳人さんらが出動し、救助に当たった。
〇六年春は残雪が多く、小屋開けの延期を決定。その後の四月中旬に岳人さんが事故死し、さらにヒュッテが全壊していたことが分かった。後を継いだ長女の明穂さんは支配人らと仮小屋を建て、〇六、〇七年と売店を営業仮設トイレも登山者に開放した。しかし、採算が合わず、今年は営業を見送った。山小屋関係者らと再建の可能性について話し合っていた。
明穂さんは廃業について「山小屋経営の経験もなく、再建費用の大きさや立地条件の厳しさなどさまざまな要因があって、苦渋の選択だった。再建を期待してくれた皆さんには申し訳ない」と話している。既にヒュッテの敷地を林野庁に返す手続きを済ませたという。
山小屋関係者でつくる北ア山小屋友交会の穂苅康治会長=松本市=は「遭難救助の面からも岳沢を無人にしておけない。早い時期にヒュッテの機能を引き継ぐ方法を考えたい」と話している。
2006年の雪害で全壊するまで遭難救助の拠点でもあった岳沢ヒュッテ(上条明穂さん提供)