|
|
山岳ガイドはいま 下 | |||||||
|
|
|
|
|
| ||||
「ガイドレシオ」。この聞き慣れない言葉が、松本市で十二日に始まる国際山岳ガイド連盟総会の期間中、並行して開かれる日本山岳ガイド協会の全国代表者会議で議題に上る。安全なガイド登山のために、ガイド一人に客を何人までつけられるかを示す基準のことだ。
日本山岳ガイド協会(東京)が基準の原案を決めたのは二〇〇四年。具体的には、雪のない時期のハイキングコースや遊歩道なら十〜十五人、岩場や雪渓など足場が不安定で滑落の危険性があるルートなら四〜八人といった具合だ。
その後も、旅行社や山岳ガイド、山小屋関係者らの意見を聴くなど三年にわたり検討を重ねてきた。今回の総会でば、岩登りや自然観察など、各分野ごとの事情を反映させた基準を提示する。
基準づくりが進められてきた背景にほ「過剰な人数の引率は事故につながりかねない」との危機感がある。さらに環境省からば、自然保護の観点からも基準づくりを要請されていた。
「旅行社への強いアピールになる」。日本山岳ガイド協会の磯野剛太専務理事(53)はガイドレシオに込めた期待を語る。
同協会の前身の日本山岳ガイド連盟が十五年ほど前に発足するまで、ガイドたちは明確な基準もなく旅行社と契約することが多かった。旅行社にとっては、依頼するガイドが少ないほどコストを抑えることができ、ツアー料金も下げられる。
磯野さんは「任された人数が適正かどうかの判断もつかず、道案内程度の認識で引き受けていたガイドも多かった」と指摘する。リスクを抱えたツアーは少なくなかった。仲間のガイドの中には、尾瀬ケ原で五十人近い客を一人で任され、気が付くと最後尾の数人の姿が見えなくなった体験もあるという。
県内でのツアー登山の遭難件数をみると、二〇〇三年が十三件、〇四年七件、〇五年五件。〇六年は十件に上り、八人が亡くなっている。
旅行社など六十五社が加盟する旅行業ツアー登山協議会(東京)も、ツアー登山への厳しい見方を意識して自主的なガイドレシオ案を作成した。
昨年一月から適用しているものの、実際の運用は各社に任されている。
日本山岳ガイド協会の降旗義道副会長(59)=白馬山案内人組合長=は「近年は改善されてきたが、ガイドの数に対して客が多い、料金があまりに安いツアーが依然として目につく」と話す。そうしたツアーに同行する外部のガイドには、北アルプスの目安である一日三万円をはるかに下回るガイド料で請け負うケースもあるという。
「ガイドも食品と同じ。社会のニーズに耐えうる質の高い商品にしなければ生き残れない」と降旗さん旅行者側の言い分を無条件に受け入れているままでは、安全管理が行き届き、お客を十分に満足させる登山は提供できないとみている。
今回示されるガイドレシオには、国内のガイドたちがこれまでより自立し、より高いレベルを目指そうとする思いが込められている。
(古志野拓史)
写真:北アルプス槍ヶ岳を背に、県内の山岳ガイド(左端)と縦走路をたどる登山者=2006年8月
ツアー登山 旅行業ツアー登山協議会は旅行社が扱う登山旅行をツア」登山と定義し、山岳ガイドら旅行業登録をしていない者が募集するものと区別している。ただ、警察の統計などでは同一視されている。山岳ガイドが報酬を得られるのは山でのガイド業務のみ。同協議会によると、2006年のツアー登山の参加者は全国で32万人余でここ数年はほぼ横ばい。
06年10月、福岡県の男性ガイドが募集した7人パーティーが北アルプス白馬岳で吹雷に遭い、50−60代の女性4人が凍死した。ガイドは日本山岳ガイド協会の認定ガイド。事故後、協会からも最も重い1年間の資格停止処分を受けた。大町署はことし10月、このガイドを伴って遭難邁場を実況見分した。業務上過失致死容疑での立件も視野に調べを進めている。