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山岳ガイドはいま | |||||||
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山々に囲まれ、多くの登山者を迎える長野県。縦走や白銀の世界に踏み出すスノーシューなど四季を通じて山の魅力は尽きない。登山者を手助けするのが山岳ガイドだ。その活動の場が広がる一方で、ガイドが引率するパーティーの遭難も起きている。松本市内で十二日、二十一カ国が加盟する国際山岳ガイド連盟(本部スイス)の総会が始まるのを前に県内のガイドにスポットを当てる。

「ロープをしっかり張れ」 「お客が落ちないように注意して」。大町市の仏崎で十月末、ヘルメットやハーネス(安全ベルト)を着けた山岳ガイドたちが岩場に声を響かせた。ザイルで結ばれて歩いたり、けが人を担ぎ下ろしたりする訓練が続けられた。
訓練に参加したのは北安曇郡白馬村の白馬山案内人組合(約百六十人)に所属するメンバーら約二十人。県が許可する信州登山案内人と、日本山岳ガイド協会(東京)の認定ガイドたちだ。
その一人、佐々木富雄さん(54)=白馬村=はガイドを始めて二十五年ほどになる。一般ルートを案内することが多く、ザイルを必要とする機会は少ない。それでも、「技術を見直し、もしもの場合に備えるために参加している」と話した。
現場では、登山技術に加え、ルート変更や山行を続けられるかの判断も求められる。
佐々木さんは今年七月、六十代後半の三人パーティーのガイドで南アルブスにいた。荒川岳−赤石岳を三泊四日で縦走して赤石小屋に下るコース。だが、小屋への斜面は残雪が多い上、雪が軟らかくてアイゼンが効かない。「命あっての山ですから」。三人には理解してもらい、来たルートを引き返した。
同組合が地元とする白馬連峰は、県内では槍・穂高連峰と並ぶ人気の山域だ。夏場には組合員五十−六十人が専業に近い形でガイドを務めている。白馬大雪渓や白馬岳の一般コースの場合、ガイド1一人が担当する登山客は「十五人程度」と要望している。ただ、旅行会社の都合で、客二十−三十人を一人のガイドが案内することもあるという。
白馬大雪渓では近年、落石による事故で死者も出ている。「必ず落石の危険性を客に周知するようにしている」と同組合の降旗義道組合長。だが、ガイドしているパーティーが事故に遭う可能性は排除できない。万が一に備えて賠償保険に加入している。客に山の素晴らしさを体験してもらう案内役でありながら、責任は大きい。
しかも、ガイドで生計を立てるのは容易ではない。北アルプスの一般コースの一日のガイド料は三万円が目安。旅館経営や会社勤めをしている人が大半で、佐々木さんも冬から春にかけては松本市内のスキー場で働く。
こうした一方で、山の案内に限らず、公益性のある取り組みに力を入れる団体もある。発足三年目のNPO法人「信州まつもと山岳ガイド協会・やまたみ」 (松本市・約五十人)は、昨年の豪雨で不通にになった北ア北アの登山道の補修に協力した。中高年の松本市民らをターゲットに、市内の「百名山」に登る企画や、山登りを学ぶ登山学校も開いており好評だ。
メンバーの一人で消防士だった高橋正幸さん(65)=松本市=は五年前に定年退職した。二十代には社会人の山岳会に所属し海外遠征に参加した経験もあり、「得意分野を生かせればうれしい」。ガイドが定年後の張り合いになっている。
県内の山岳ガイド 1953(昭和28)年に施行された県観光案内業条例に基づき、件が県内の山岳案内業務を許可する「信州登山案内人」の資格者は2006年度、県内外合わせて656人。県観光企画課は「県内で山岳ガイドを営む場合は原則、案内人の資格が必要」とする。県山岳総合センターなどで年一回、筆記・実技試験を行う。本年度の試験は受験者35人が合格した。3年に1度、書類による更新手続きがある。
このほか、日本山岳ガイド協会が認定する県内在住ガイドは135人。全国の792人の17%を占める。
写真:ザイルの使い方を学ぶ山岳ガイド。安全を確保する技術だけに真剣な表情だ=10月31日、大町市の仏崎