奥穂高岳ヘリ事故

信濃毎日新聞 掲載

平成19年06月05日(火)


 標高三千bの稜線(りょうせん)で、何が起きたのか。四日朝、北アルプス・奥穂高岳に近い穂高岳山荘で起きた東邦航空(東京)ヘリの墜落事故。北アでは四月にも水晶岳でヘリが墜落。東邦航空では今月二日にも、岐阜県中津川市で別の死亡事故が起きた。事故を受けて同社は、山小屋への荷物搬送を当面見合わせると発表。夏山シーズンを控えた山小屋関係者にも困惑が広がった。

山小屋関係者「輸送・救助は…」困惑

 東邦航空は、県内の北、南アルプスと八ケ岳で、山小屋への荷物の積み降ろしや人員輸送のほか、県警などの要請を受けた遭難救助にも実績があり、山の関係者に頼られる存在だった。

 白馬岳など北ア北部で七つの山小屋を経営する白馬館(北安曇郡自馬村)は、六つの小屋の荷揚げ作業を同社に委託。「食糧は余裕をもって備蓄してある」とした上で、「(輸送中止が)長引けば登山シーズンの七、八月に影響が出る」と心配する。

 月二回程度の輸送を依頼している北ア南部の常念小屋(松本市)。山田恒男社長(74)は「三十年以上も前からヘリを飛ばしている東邦航空は仲間」と言う。原因究明を求めた上で、「早めに消灯したり、食事を減らしたりして物資を節約し、再開を待ちたい」と話した。

 墜落したヘリの操縦士が、山岳地域での飛行経験が豊富な関根理さんだったことに、八ケ岳の主峰・赤岳近くで赤岳天望荘を経営する藤森周二さん(43)"諏訪市“は「強風が吹き付ける赤岳周辺でも正確に荷を揚げ降ろしする人なのに」と驚いた。

 北アルブス北部地区遭対協の降籏義道救助隊長=白馬村=は「東邦航空の救助用ヘリは小型でパワーがある貴重なヘリ」と、山岳遭難救助への影響を心配する。同社ヘリは小回りが利き、同機より大きい県警や県の防災ヘリでは難しい場所や気象条件でも活動してきた。救助関係者には、ヘリによる救助ができないケースが増え、救命率の低下を懸念する声もある。

写真:穂高岳山荘隣の診療所に墜落した東邦航空のヘリコプター=4日午前8時38分(県警提供)