北ア・水晶岳ヘリ墜落

8人重軽傷

「回転翼雪に接触」

信濃毎日新聞 掲載

平成19年04月11日(水)


 冨山市の北アルプス・水晶岳で九日タに起きたヘリコプター墜落事故で、富山、長野両県警は十日早朝、二千九百b地点の水晶小屋付近から、乗客乗員十人全員をヘリで富山県内の病院に搬送したが、二人が死亡した。ほかの八人は骨折などで重軽傷を負った。冨山県警は機長が操縦を誤った可能性もあるとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査を始めた。

 生存者の証言から、ヘリの後部ローター(補助回転翼)が雪に接触、墜落した可能性がある。

 富山入りした国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調査官は、県警の捜査員とヘリで現場上空から事故機の横転や地形の状況を確認。事故原因の調査が本格化した。

 調査後の記者会見で梅村行男主幹調査官は「原因特定には約一年かかると思う」と述べた。

 事故機を運航したアカギヘリコプター(本社・前橋市)は二〇〇六年七月までにヘリによる計四件の事故を起こしており、国交省は〇二年六月の奈艮県の墜落事故について同七月、同社を厳重注意していた。

 富山県警によると、死亡したのは藤田哲也機長(52)=奈良市青山=と、乗客の建築会社「ハシバテクノス」社員長屋修さん(49)=松本市並柳。死因は藤田機長が外傷性ショック、長屋さんが脳損傷で、事故が原因で死亡したとみられる。

 ほかの八人は、ヘリを所有する「アカギヘリコプター」の営業担当小川力皇さん(31)=東京都福生市=が両足を骨折するなど、いずれも骨折や頭を強く打つなどした。

 事故機を所有するアカギヘリコプター-によると、藤田機長は事故直前の九日午後三時五十分ころ、同社東京基地に「天候が悪く(客を迎えに行く)作業を中止する」と連絡したが、実際には水晶小屋に向かっていた。

 同社は、乗員からこの方針変更の経緯について、聞き取り調査をしている。事故機はヘリが雪に沈まないようにする「スノーシュー」という部品も付けていなかった。

 ヘリは小屋から約五十bの斜面下で機体の右側を下に横転し、前部を大きく破損。周囲に部品などが散乱した。

 乗客で長屋さんと同僚の友野章さん(35)=首に軽傷、松本市蟻ケ崎=は搬送先の病院関係者に「後ろの口ーターが雪につかえたか、接触したかが原因ではないか」と話した。

 記者会見した、乗客の設計事務所経営篠伊知郎さん(45)=東京都板橋区=は、死亡した二人を除く八人が水晶小屋で一夜を過ごしたことを明らかにした。

 調べでは、ヘリは九日午後四時二十分ごろ、小屋近くのヘリポートから離陸直後に墜落。山開きを前に小屋の改築計画があり、小屋管理人の伊藤圭さん(30)、妻敦子さん(27)=ともに安曇野市穂高有明=らが視察を終えて大町市内のヘリポートに向かうところだった。

死亡・負傷した方々

富山市の北アルプス・水晶岳で起きたヘリコプター墜落事故の死傷者は次の通リ。一敬称略一

【死亡】藤田哲也(52)=機長、奈良市▽長屋修(49)=「ハシバテクノス」社員、松本市並柳

【重傷】大城敦(37)=整備士、千葉県船橋市▽伊藤敦子(27)=伊藤圭の妻、安曇野市穂高有明▽小川力皇(31)=営業担当社員、東京都福生市▽成田純(24)=整備士、千葉県船橋市

【負傷】▽伊藤圭(30)=水晶小屋管理人、安曇野市穂高有明▽徳武寿男(51)=建築業、白馬村北城落倉▽友野章(35)=「ハシバテクノス」社員、松本市蟻ケ崎▽篠伊知郎(45)=設計事務所経営、東京都板橋区