志賀、白馬スノボ7人救助・宝剣岳戻らず

信濃毎日新聞 掲載

平成19年01月09日(火)


白馬乗鞍岳山スキー夫婦は自力下山

 下高井郡山ノ内町志賀高原の焼額山スキー場で宿泊先に戻れなくなっていた岐阜県のスノーボーダー六人は八日午前一時五十分、スキー場西側の山中で遭難救助隊に発見された。中野市内の病院に運ばれたが、全員けがはなく、無事。北安曇郡白馬村のスキー場で行方不明になっていたスノーポーダー一人も無事で見つかり、同郡小谷村の白馬乗鞍岳でビバークしていた二人も自力下山した。

 焼額山で宿泊先に戻れなくなっていたのは岐阜県安八町、会社員安田智章さん(25)ら二十-二十八歳の男性六人。同スキー場から西へ`ほど離れた沢でかまくらのような雪の壁を作り、身を寄せ合っていたところを、雪上車を降りて徒歩で捜索していた救助隊員に発見された。

 グループは中学のバレーポール部の0B仲間。中野署やグループによると、山頂近くから西側のコースヘ降りている途中、悪天候で視界が悪くコースを外れたらしい。

 七日午後二時半ごろ、グループの一人の母親から「息子から助けを求めるメールが届いた」と一一〇番通報があった。同夜、グループと携帯電話がつながったため、同署などは雪洞を掘って避難するよう指示した。

 北ア北部の白馬乗鞍岳山ノ神尾根付近を山スキーで下山中、悪天候に見舞われて携帯電話で救助を求めていた神戸市須磨区、会社員原田亮さん(35)と妻の聖子さん(37)は八日午後二時二十分ごろ、五日に入山した小谷村・栂池高原スキー場に自力下山した。二人とも両手に軽い凍傷。

 また、白馬村の白馬47スキー場で七日に仲間とスノーボードをしていて行方不明になっていた神奈川県鎌倉市の会社員杉山広次さん(24)も八日午前八時四十五分ごろ、コース外の雑木林にいるところを県警ヘリコプターが発見、救助した。けがはないという。

写真:救助されて雪上車で運ばれるスノーボーダー(右の2人)=8日午前3時12分、山ノ内町平穏・焼額山スキー場西の林道入り口


いつの間にかコース外(志賀)

 暗闇に揺れるライトの光を見つけたスノーボーダーらの必死の声が、夜を徹して捜索していた救助隊員の耳に届いたのは午前二時前。志賀高原・焼額山スキー場を訪れていた男性の母親が一一〇番通報してから、十一時間余が経過していた。

 六人が見つかったのは焼額山スキー場のゲレンデからニキロほど離れた沢筋"地図=メンバーの一人、岐阜県羽島市の会社員金森大輔さん(28)によると、七日午後に同スキー場の山頂付近から滑走を始めたが、いつの間にかコース外へ出ていたという。「ガスで視界が悪く、林間コースだと思っていた」午後二時ごろ、自分たちが迷っていることに気付いたが、「もう後戻りできず、下るしかなかった」。沢にダムが見えた所で一人が母親に「山の中をさまよっている」とメールを送り、金森さんも携帯電話で宿泊先のホテルを通じてパトロール隊に連絡したという。

 中野署や志賀高原特別遭難救助隊などは午後三時ごろから雪上車などを使って約二十人で捜索を開始。携帯電話からの手掛かりは、がけがあって下に降りることができないことなどわずかだったが、「長年の経験」(救助隊員)で捜索ルートに選んだ林道沿いに、スノーポードで滑った複数の跡を発見した。

 6人は救助されるまでの間、15分ほどの間隔で立ったり座ったりを繰り返した。金森さんは「なんとか寝ないように互いに声を掛け合った。あと2,3時間(救助が)遅かったら助かったか分からなかった。救助隊の人たちに感謝の気持ちでいっぱい」と話した。


雪洞で寒さしのぐ(白馬乗鞍岳) 

 栂池高原スキー場に自力下山した神戸市の原田亮さんと妻の聖子さんは、予定ルートから南側に外れた標高約千五百bの地点に雪洞を掘ってビバーク。ヘリコプターの音が聞こえたが発見されず、「きょう下らないと乗り切れないだろう」と判断し、八日午前十一時ごろ、スキーなどの装備を捨てて下山を始めたという。

 二人は五日に同スキー場から入山。白馬乗鞍岳下部の天狗原から日帰りで滑り降りる計画だったが、ほかのパティーが残したスキー跡をたどるうちにルートを誤ったという。六日から天候が悪化。二人は雪洞を掘り、簡易テントをかぶって寒さをしのいだ。

 食料は一日分しか持っておらず、燃料も少なくなったため七日午後一時半ごろ携帯電話で一一〇番通報。同日午後三時ごろの通話を最後に携帯電話の電池が切れた。

 家族などによると、二人とも数年の山スキー歴があり、今回のコースも滑走経験があるという。亮さんの父親の原田忠好さん(72)は「山登りに自信があり、過信があったかもしれない」と厳しい表情だった。

 一方、白馬村のスキー場で行方不明になった神奈川県鎌倉市の杉山広次さんは県警ヘリコプターが発見した時、手を振って救助を求めた。

 杉山さんは大町署に「技術が未熟でコースを外れた」と話しているという。自力下山は難しいと判断し、雪の中に穴を作って移動せずに救助を待っていたという。

写真:山岳救助隊員に抱えられながら救急車に向かって歩く杉山広次さん(左から2番目)=8日午前9時20分ごろ、白馬村北城のヘリポート


中ア・宝剣岳会社員戻らず

 八日午後四時半ごろ、埼玉県川口市西青木、会社員降矢弘文さん(50)の家族から「中央アルプス・宝剣岳方面から、下山予定をすぎても連絡が無い」と駒ケ根署に届け出があった。

 同署によると、降矢さんは五日、写真撮影を目的に入山し、八日午前に下山する予定だった。同日タになっても家族に下山の連絡が無く、携帯電話もつながらないという。同署は九日朝から県警ヘリで捜索する予定。

 宝剣岳直下のホテル千畳敷によると、一帯は六日から雪が降り続き、しらび平-千畳敷を結ぶ駒ケ岳ロープウェイは、強風のため七日から運転を見合わせている。