北ア北部 相次いだ遭難

リーダーの責任より重く

信濃毎日新聞 掲載

平成18年12月20日(水)


 北アルプス白馬岳で七日午後五時半ごろ、山頂直下の白馬山荘に「吹雪が激しくなって、行動が取れなくなった」と、九州からの七人パーティーの男性(48)が助けを求めた。小屋から数百bの稜線(りょうせん)上で女性四人が動けなくなっており、うち三人を近くの別の山小屋に収容した。稜線上の一人と収容した中の一人は意識がないという。残り二人はビバークしている。(10月8日付朝刊)

 「『トレッキング』という表記は『登山』に直した方がいいだろうか」山岳の魅力と危険性を観光客らにどう伝えたらいいのか、北安曇郡白馬村観光局の加藤潔次長は悩んでいる。

 観光局が発行してきたパンフレットでは、八方尾根スキー場の上部に続く尾根筋や白馬大雪渓をたどるルートを「トレッキング」コースとして扱ってきた。来年も同じ表記でいいのか真剣に考えなければならない状況となっている。

 八月には散策で白馬大雪渓に入ったツアー客が落石に遭い、女性二人が死傷。北ア北部では七月から落石による死亡事故が続いており、危険に対する認識の甘さを指摘する声もあった。

 さらに十月上旬には、ガイドに導かれた九州からのパーティーが白馬岳近くで吹雪に巻かれ、五十-六十代の女性四人が凍死した。十月ともなれば北アではいつ雪になってもおかしくない。この七人パーティーの装備は冬山に対応できるものではなかった。山岳関係者は、八千b峰に挑んだ経験もあるこのガイドの判断を嘆いた。

 北ア北部では今年、一九五四(昭和二十九)年の統計開始から三番目の多さとなる二十四人が遭難で死亡。二人が行方不明となった。

 かつて北アの主役だったのは大学山岳部や社会人山岳会の若者たち。山から遠ざかる若者と入れ替わるように中高年の登山ブームが訪れる。近年は、中高年がガイド登山やツアーで高山を目指す傾向が強まっている。

 旅行会社など六十五社が加盟する「旅行業ツアー登山協議会」(東京都)によると、ツアー登山の需要は年間約二十五万人とみている。さらに増加が見込まれるという。

 今年の登山状況を振り返るとき、北ア北部地区遭対協の降籏義道救助隊長(59)は「ガイド自身は能力があるつもりでも、初歩的な判断ミスから事故につながるケースが目立った」と話す。中高年登山が雪の季節にも広がる中、これまで以上にリーダーの資質が間われるようになっている。

 県警山岳遭難救助隊長を七年間務めた大町署の翠川幸二副署長も、リーダーとしての自覚に欠けるケースが目につくと指摘。ガイドのより責任ある行動と判断を求めている。(小松英輝)

写真:九州からの7人パーティーが北アルプス白鳥岳で遭難。ヘリコプターで遺体が収容された=10月9日

 北アルプス北部で相次いだ遭難 4月には山スキーで入山した3グルーブ計6人が雪崩などで死亡。7-8月には3件の落石事故で3人が亡くなっている。ガイドが募集した九州の計7人パーティーは10月、白馬岳近くで吹雪に遭い、女性4人が凍死した。

県内の今年の遭難者数は1954(昭和29)年の統計開始以来、過去最多の220人(12月18日現在)に上つている。