八ヶ岳遭難3人死亡

阿弥陀岳山頂東側で発見

信濃毎日新聞 掲載

平成18年3月21日(火)


 八ケ岳連峰の阿弥陀岳(標高二、八〇五b)付近で十九日夜、凍傷や疲労で動けなくなり救助を求めていた男女三人パーティーは二十日、山頂東側で見つかったが既に心肺停止状態で、収容先の茅野署で午後四時二十分、死亡が確認された。いずれも凍死だった。

 同署の調べによると、死亡したのはいずれも都内の登山愛好グループ「東京アルコウ会」メンバーで、東京都江東区、会社員長倉久敏さん(57)、横浜市神奈川区、会社員竹内雅雄さん(47)、東京都板橋区、パート従業員茂木みどりさん(45)の三人。

 民間ヘリからの捜索で、茅野署員らが山頂東側の急斜面にテントらしきものを発見。地上に降りた署員らが午前十一時四十分ごろ、テントにくるまるなどして横たわっていた三人を見つけた。付近に三人の装備品とみられる寝袋やザックなどが散乱していたという。

 三人は十八日、諏訪郡原村の登山口から一泊二日の予定で、阿弥陀岳の南稜(りょう)に入山。別行動をしていた同じ会の仲間に携帯電話で救助を求め、山小屋を通じて同署に通報があった。

 長野地方気象台によると、八ケ岳一帯は十九日から二十日朝にかけて吹雪だった。

 急激な天候の変化悲劇に八ケ岳連峰・阿弥陀岳付近で遭難した「東京アルコウ会」の三人は、冬山登山の経験があり装備も問題なかったというが凍死した。救助関係者は急激な天候変化の危険をあらためて指摘、「天候を予測した行動が必要だ」としている。

 「予想を大きく超える暴風などで、思いもよらぬ結果になってしまった」。同会の窪田紀夫代表(63)=茨城県取手市=は駆け付けた茅野署で、やり切れない様子で話した。同会は一九二一(大正十年)創立、発起人に田山花袋や菊池寛らも名を連ねるという。

 窪田さんによると、リーダーの竹内雅雄さん(47)はヨーロッパアルプスやヒマラヤ登山の経験もあり登山歴三十年。長倉久敏さん(57)と茂木みどりさん(45)も、北アルプスなど冬山の登山経験は豊冨だった。

 登山前に計画書を確認した窪田さんは「装備や食料も万全の準備だった」と話す。ただ、長野地方気象台によると、三人が入山した十八日は低気圧が接近し、十九日は雪の所もあるとの予報だった。会員の中から「結果論だが、天候の読みが甘かったのかもしれない」との声も漏れた。

 阿弥陀岳の東、赤岳(標高二、八九九b)山頂直下にある山小屋「赤岳天望荘」によると、一帯は十九日昼前から吹雪となり、二十日未明は氷点下一九度まで冷えた。

 三人の捜索に当たった諏訪地区山岳遭難防止対策協会の田中光彦隊長は「ふもとでは晴れていても八ケ岳山頂付近はふぷき、厳冬期の山に戻る時もある」と指摘。県警地域課は「登山者は天気図を描き、前線の動きを予想した的確な行動が必要」としている。

 谷川連峰で1人不明に1人も重体

 二十日午前八時半ごろ、新潟、群馬県境の谷川連峰・仙ノ倉山(二、〇二六b)に入山した「みろく山の会」(横浜市)のメンバーが「山頂付近で遭難して一人が行方不明、一人が重体になった」と新潟県警に110番した。

 県警はヘリコプターで創作したところ午後3時ごろ、山頂の2、3百b下部でテントや人影を見つけたが、乱気流のため接近できなかった。天候が回復しないため、夕方で捜索を活動を中断、21日早朝に再開する方針。

 南魚沼署などによると、パーティーは同会の五十四-六十三歳の男性五人、女性四人で、いずれも神奈川県内に在住。うち七人は無事でテントにいるという。リーダーの武藤常文さん(58)が携帯電話で通報した。

 また谷川連峰の平標山(一、九八三b)に山スキーに入ったとみられる東京都文京区西片の弁理士高草俊治さん(54)が、連絡が取れず、県警が捜している。