「友好のピッケル」中学道徳教材に

カナダの山頂

日本隊初登頂の記録

信濃毎日新聞 掲載

平成18年1月14日(土)


 一九二五年にカナダ・アルバータ峰(三、六一九b)に初登頂した日本人が頂上に残したピッケルが、長野高校(長野市)の山岳班0B会などの手を経てふもとの博物館に完全な形で展示されているエピソードが、来年度から使われる中学二年向けの道徳の副読本で紹介されることになった。OB会は「後世に語り継ぐきっかけになってほしい」と喜んでいる。

 エピソードを取り上げるのは光村図書出版(東京都)の副読本で、タイトルは「友好のピッケル」。ピッケルは日本の登山家の草分け、槙有恒さん(故人)らが初登頂の証しとして頂上に残した。岩で険しい同峰の第二登は二十三年後の米国隊。同隊がピッケルの一部を持ち帰った。現場に折れて残された石突き部は六五年に登頂した長野高校山岳班0B会の登山隊が見つけ、長野市内で三十年余リ保管していた。

 同0B会は九七年、アルバータ峰のふもとの山岳博物館に米国隊が持ち帰った「折れたピッケル」が展示されていることを山岳関係の機関紙で知り、持っていた石突き部を日本山岳会に寄贈。博物館の展示に加わり、日本とカナダの山岳会の間で交流が深まった。

 光村図書出版によると、登山愛好家の編集委員が「国際協力、親善のあり方としてふさわしい話」と出版社に推薦、書き下ろしたという。「海外への支援といった話だけでなく、国境の壁を意識しない交流の姿を子どもたちに伝えたい」と同社。

 六五年の登山隊員だった原謙一〇B会長(67)=長野市稲田=は「話が風化せず、子どもたちの記憶に残れぱうれしい」。三月にカナダを訪れ、展示された「友好のピッケル」を確かめて来る予定だ。

写真:「友好のピッケル」の話が載った中学2年生向けの道徳副読本
97年12月に都内で開かれた日本山岳会の会合で約半世紀ぶりに"再会"したピッケル。左は長野高山岳班OB会の原謙一さん